キャッチコピーは「にっぽんいち なつかしい ゆうえんち」。ジェットコースターや観覧車はない。園内はサッカーコートよりも少し大きいくらいの広さで、メリーゴーラウンドなど大型遊具8基と、前後に揺れる車など小型遊具16台があるだけ。それでも70年近く群馬県民に愛されているのが、前橋市中央児童遊園「るなぱあく」だ。
オープンは1954年。愛称の「るなぱあく」は前橋市出身の詩人萩原朔太郎の詩で「遊園地」に「るなぱあく」とルビが振られていたことからきている。2004年に公募で決まった。
土曜日の5月27日、るなぱあくを歩いた。園内は子どもたちであふれ、列を作っている遊具もあった。
前橋市の主婦青柳貴美子さん(68)は夫、娘、孫と4人で来た。生後8カ月の孫は初めての遊園地で、豆汽車やメリーゴーラウンドに乗った。園のそばで育った貴美子さんは「家族でも幼稚園でも来ましたね。全部で何回来たか分からない。豆自動車が好きでね、普段できない運転をして壁にぶつかったこともあった。広くも高くもならないまま、昔のままを受け継いでもらいたいね」。
神保進さん(61)も娘と孫と来た。「昔は高台に観覧車があって、ツキノワグマもいましたよ」。3歳の孫と手をつなぎ、孫の歩幅でゆっくり歩いていた。
昔ながらのレトロな雰囲気とともに、るなぱあくの大きな魅力は乗り物代の安さだ。小型遊具は開園当初からずっと10円。国の登録有形文化財の電動木馬も10円で乗れる。車型の乗り物を運転する豆自動車や、回転しながら上がっていく飛行機の乗り物などの大型は50円。スピードの出る乗り物もなく、小学生だけでも安心して遊べる。
市内の小学校に通う5年生5人は、親に送迎してもらい、子どもだけで遊んでいた。「大きい乗り物はないけど、ここならみんなですぐ来られるから」
渋川市の柴田深里さんと大崎瑞穂さんは、サッカークラブ仲間で小学1年生の息子2人を連れてきた。入園直後から夕方までで、子どもたちは20~30回乗り物に乗ったという。「安いし、子どもだけで遊ばせても心配ないのがいいところ」。子どもらはあちこち走りまわるが、狭い園内ではすぐに見つかった。
どんな人が働いているのか気になった。園によると、学生や元教師などだという。
稲村庸介さん(71)は元競輪選手だ。45歳で引退し、15年ほど前から働いている。「子どもがすごく好きって訳じゃないけど、嫌いじゃないみたいね」。元々口下手だったというが、働き出してからは妻に「ずいぶんしゃべるようになったね」と言われた。40度近くなる前橋の夏は耐えがたいが、「夏を越えてもう1年、もう1年って毎年ね」。もうしばらくは働き続けるつもりだという。
疲れた心、いやしてくれた
記者がるなぱあくに初めて行…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル